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(3) 日本の通信政策

日本政府も高度情報社会実現のための施策として、ネットワークの高度化を促進するための規制緩和を発表し、93年に携帯電話の売り切り制の導入や国境を越えるテレビ放送の実現等10項目が実施された。94年には第1種電気通信事業者の参入規制の透明化等90項目が、95年も公−専接続の自由化や各種手続きの簡素化など26項目について行われている。

また、94年8月に首相を本部長とする「高度情報通信社会推進本部」が設置され、米国によるGII構想の提唱*2も受ける形で、95年2月に「高度情報通信社会推進に向けた基本方針」が発表された。基本方針では、高度情報通信社会に向けての行動原則や官民の役割、実現のための政策課題や国際的な貢献が述べられ、高度情報化はニーズに基づいた経済効率の追求により民間主導で実現されるものとされている。

1996年6月、94年から2年がかりで検討されていた「21世紀に向けた通信・放送の融合に関する懇談会」での検討内容が「情報環境の変化と通信・放送の融合背景と論点−社会経済の構造変化と情報通信産業の展望」として発表された。報告書では、情報伝送路の共用化による通信と放送の融合には従来の区分の見直しが必要であり、わいせつ情報などの反社会的情報の流通や迷惑通信等の社会問題についても「表現の自由」を基本原則としつつ権利保護や通信の秘密、ネットワーク運営者や利用者の権利と義務、被害救済のための事後的措置などについて見直す必要があると提言している。

1996年8月、郵政省は「情報通信政策の重点−社会経済構造の改革を推進する情報通信政策の展開−」を発表し、欧米諸国と比較して必ずしも高い水準とはいえないわが国の情報通信高度化の現状に対し、1997年度に設定する4つの課題を提示し具体的な取り組み方針を示している。4つの課題と取り組み方針は以下のとおりである。

?@ 情報通信の高度化による経済構造の改革

(a) 各省連携によるプロジェクトの推進

(b) 情報通信ニュービジネスの振興

(c) 全国的なネットワークインフラの整備


*2 1994年3月、アルゼンチンで開催されたITU第1回世界電気通信開発会議で、米国のゴア副大統領は地球規模での情報ハイウェイ構築(GII:Gloval Information Infrastructure 世界情報基盤)を提唱し、これを受けた同年7月のナポリサミットでのクリントン大統領による呼びかけで、95年2月にブラッセルで情報通信サミットが開かれた。この席で、GIIを進める上での基本原則が合意されるとともに、国際共同プロジェクトも提案され現在進行中である。日本が関係するのは、遠隔医療実証実験、遠隔研究協力実験、ATM網の品質制御及び基礎的相互運用性に関する実験、衛星を利用した遠隔高精細映像ポストプロダクション実験など。

 

 

 

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